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 凛とした口調はそのままに、可憐な面輪を傾けて、
カガリの琥珀がアレックスへと添えられる。

「アスランに続いておまえまで失われてしまったら、
私の日常は崩壊する。
こんなにも必死に引き止めてなお、
私はおまえに切られるんだ。

言っては何だがアスランが、何の前触れもなく
私を置いて逝ったとき以上の
絶望を味わうことになるだろう。
例えて言うなら地獄の苦しみと言う奴だ。

しかも、二度目となれば
這い上がる気力だって残ってはいない。
そんな境遇におまえは主を落とすのか?」

「……そのおっしゃりようは卑怯です、代表」

「あぁ、そうだな。
それに一度目はおまえの為じゃない。
しかもおまえは私の為に作られた
アレックスであって、
アスラン・ザラではないのだから」

カガリを置いて、死んでしまった愛する彼と
真実別のものであるのなら。
目前で、透明な雫を湛えた鮮烈な琥珀が瞬いた。

アレックスは夢見るように、
その冴えた美しさに魅了される。

「私のものだと言うのなら、
主の我儘の一つや二つ、
聞いてくれてもいいんじゃないか?
おまえは私の為だけに存在する
アンドロイドなんだろう?」

試すように、揶揄かうように、
艶麗な眼差しがアレックスを捉えた。
身の内に、不可思議な衝動が湧き上がる。

データでは説明のつかない、
しかし明らかに目の前の主に起因する
としか思えない獰猛なそれ。

アレックスが機械である以上、
そんな感覚を彼女に対し……それ以前に、
誰に対してであろうと感じるなどありえない。
見た目こそ、常と変わらぬ気丈な彼女。

けれどその強く気高い横顔が、
本当はどれほど脆く優しくて、
張り詰めた糸のように切実なものであるかを
アレックスは誰より知っている。

「私の前からいなくなるな、アレックス」

涙を隠す儚い視線。
震えを帯びる彼女の声に劣情としか言いようのない
下劣な衝動を抱いたことを覚えている。
こんなにも清廉で、アレックスの遥か高みにある存在に、
獣じみた熱を滾らせるなどどうかしている。

大体が、人で言うなら性衝動としか
表現しようのない感覚を、
単なる機械のアレックスが抱く。
あってはならないことだった。
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