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口調こそ陽気なものであったけれど、
カガリの表情は今にも泣きそうなものでしかなくて。
恐らくは世界で唯一彼女の最愛の男のみが知る、
脆くて優しい繊細な素顔。
それは、アレックスがよく知る主のものだった。
ごく稀にアレックスの前でだけ、
カガリはアスランが亡くなって以来
決して崩すことのなくなった、
外向きの擬態を無意識に外して見せることがある。

わかりづらい彼女のそれに
アレックスが気づくことができたのは、
単に彼女が唯一愛した男の前でのみ
晒すことができたのだろう
繕わぬ時間のデータをオリジナルから
受け継いていたからだ。

アスラン亡き後アレックスの前でのみ
不意を打って晒されるカガリのそれに、
不甲斐ない彼女の恋人になり代わり、
儚い彼女を懐に抱き入れ守りたいと
どれほど願い続けてきただろう。

だがその度に、一瞬の素顔に
打って変わって彼女が見せる
凛と気高い横顔に、
彼女がどれほどオリジナルを愛していたか、
今も変わらず彼のみを求めているか、
呆れるほどに理解した。

そして今、彼女はまた
最初にアレックスと会ったときと同じ顔をして見せた。
自分の命より大切だったオリジナルの死を
まるで大したことでもないように
語り聞かせたときと同じ顔。

なのに、たぶん主は気づいていない。
自身がそれほどまでに追い詰められた横顔を
アレックスに晒していることを。

凍らせた心を作った微笑みに押し隠し、
見た目平静を装って。
その裏に、どれほどの哀しみを
カガリは隠しているのだろうか。

ともすれば楽しげとすら感じられる
表情を見せるカガリに、
アレックスは苦しげに眉を寄せる。

自分では、やはり主を満たすことは不可能だ。
動かしがたい真実を思い知った気がして、
アレックスは無意識に自身の胸元を握り締めた。

そこに縋るものでもあるかのように。
求めるものなど、
信じるものなど彼には主以外ないと言うのに。

そんな顔で俺をご覧になるのはお止め下さい。
貴女の愛するオリジナルはもういない。
声にはせずに、けれど万感の想いを込めて、
アレックスはカガリを引き寄せた。

確かに彼は、
今も失われた自分を惜しむ暇すらないほどに
貴女に焦がれ続けているに違いない。
だと言って、彼女の元に戻ってくるなど
あの男には叶わないのだから。

「忘れて下さい。それこそが、
アスラン・ザラの望みです。幸せになって下さい。
彼のことなど気にせずに」

思わず溢れたアレックスからの呟きを、
見た目軽やかに聞こえなかったふりで受け流し、
カガリは柔らかに彼を見上げた。
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