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「アレックス!」

フロアに響く一発の銃声。
通常ではありえないことに、
テロリストは機内での発砲を躊躇わなかった。
「伏せて下さい。ご心配は不要です」
「でもっ!」

「飛行中であるにも関わらず、
銃による発砲を躊躇う様子が見られない。
と言うことは、敵はこの時点で既に代表の生存に、
適正な価値を見出していないと言うことになります。

まずは御身の安全を最優先にお考え下さい。
俺が陽動を引き受けます。
代表はその間に後方の護衛官たちと合流し、
現在秘かにこの機体と並列して
フォーメーションフライト中の
フラガ機及びムラサメ隊の保護を受けて頂きたく」

アレックスに客席と客席のシートの間、
上から覆い被さるように荒く座面へと押し付けられて、
離せとカガリが声を上げた。

「駄目だ。そんなことしたら今度はおまえが的になる!」
「お忘れですか?俺の身体は金属です。
見た目脆弱に見えるでしょうが、
被弾したところで擬態としての表面を覆う
人工皮膚が破損する程度、何ほどのこともありません。

もちろん被弾箇所からは、
擬似的な出血くらいあるでしょうが、
痛みやダメージは形ばかりのものですし。
ですから代表さえご無事であるならば、
俺への配慮は無用です」

言うなりカガリを抱き起こし、懐へと抱き入れたアレックスが、
鋭い視線を先方に向ける。

「敵の装備が不明な以上、様子を見るのは危険です。
俺が先行して敵を止めます。
代表は御身の安全を保持しながら
迅速に後部フロアへと移動して下さい」

「おまえだけ、先行……?」
カガリがすかさず異論を唱えた。

「有り得ないな。私が認識しているだけで
敵は最低でも三人はいる。
おまえ一人での対応は無理だ」

過去数多の危機的な状況を、己の判断のみで切り抜けた、
有能指揮官たるカガリの賢察は、
当然ながら至極妥当なものだったけれど。

「大丈夫です。いざとなったら俺がテロリストを道連れに、
非常ハッチから外へと飛び出すことも可能です。
ハッチは自動で閉じますし、
多少気圧は下がりますが
機内の人員の命に関わるほどではありません。

その際俺が破損または損壊したとして、
それにより再生不能なダメージを受けたとしても、
代表さえご無事なら、今回のミッションは成功です」

淡々と現実のみを告げてくる、
まさに機械的としか言いようのないアレックスの弁に、
カガリが思わず声を荒らげた。

「そうじゃない、そんなんで言い訳あるかっ!
間違ってもおまえが敵を道連れに、なんて。
もしそんな真似をするのなら、私はおまえを許さない!」

藻掻くカガリを押さえつけ、アレックスから
常にない激しい叱責が落ちてくる。

「代表こそ冷静におなり下さい。
俺は貴女を守る為だけに作られたものだ。
それこそが存在理由である以上、
今言った策がその時点での最善であるならば、
例え代表の仰せでも中止する理由はありません」

「馬鹿を言うなっ!
万が一そんなことしたときは……いいか。
私はおまえを追いかけて、この機体から飛び降りる!
やると言ったらやるからなっ」
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