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色事にはてんで明るくない上に、
認めるのはやや納得いかなくはあるけれど
おまえの周りのご婦人がたと比べると
腕っ節はあっても女性としての魅力に欠ける

と男気溢れる彼女にしては珍しく、
困った風に視線を漂わせる王妃を見つけ、
アスランが可笑しくてならないように
再び彼女に手を伸ばした。

「さてはどこぞのお節介から
余計な言葉を吹き込まれてきたな?
カガリの魅力は伴侶であるこの俺が、
嫌と言うほど認識してる。
女性としての妻の魅力は、
夫だけが知り得ていればいいことだ」

むしろ赤の他人から、
おまえのことを色っぽいだの魅力的だの言われたら、
王たる俺が嫉妬で国を傾ける。それでいいのか?と
戯れめかして伸ばされたアスランの指が、
濡れたカガリの双丘を悪気などなさそうに柔らかく撫でた。

反射的に、王妃が強く眉を寄せる。
逆らうことこそしなかったけれど、
鋭い眼差しで穏やかな夫の翡翠を睨みつけ
カガリが強く非難を示した。

しかし国の王たる彼女の主は堂々と
悪びれないままだった。

「俺は好きな女性に知識とか
込み入った手管は求めてないし、
昔から繰り返し伝えてきたと思うんだけど、
理想の女性はカガリだよ。

おまえさえ居れば何もいらない。
カガリと一緒に長い生涯を過ごすこと、
そのこと自体が大切なのであって、
結果として世継ぎを授かれれば
文句なしだと言ってるだけの話だから。

それにどうしても子が出来ないとなったなら、
養子の当ては沢山あるし、
子と言っても世継としての話なら、
成人してからでも貰い受けることは可能だ」

幸いあぁ見えて、俺たちの周囲には
見所のある逸材が揃っているから心配は無用だと
明るい口調でアスランに言われ、

だけど私は賢王と言われるアスランの血筋を
引く子の方が、おまえのことを
至上の君主として信奉する家臣たちや
おまえを大切にお育てになった先王さまや
お母上さまとしたら
嬉しいんじゃないかと思ったんだと

指先での妻への悪戯を一向にやめる気のない
不埒な夫を避けながらカガリが口を尖らせた。

「それに、カガリはそこまで無知じゃないよ。
ある程度のことは俺が一から教えたはずだ。
こんなに可愛くて勇敢な、
情の深い王妃を得て、
この俺が満足してないとでも思ってる?」

あやす口調のアスランが言った。

延べられた頼もしい腕を受け入れて
大人しく夫の胸に収まったカガリが、
幼少の頃から彼女をよく知るアスランにすれば
懐かしくも幼い見慣れた愛らしい表情を浮かべ、
伺うように彼を見上げる。

「そうは言うけど周りの世慣れた男性陣は、
わざわざ手を掛けて育てたりなんかしなくとも、
幸いなことに陛下を好いてくれるご婦人がたは
今現在も浴びるほどいるって言ってるぞ?

彼女らは私などの何倍も魅力的な大人の女性で、
そう言った手管にも長けている。
剣技だってそうだけど、
努力だけでは補えない天賦の才ってあるんじゃないか?

キラ兄さまとアスランが
カガリはまだ知らなくていいだとか、
いずれはわかることなんだから、せめて今くらい
無関係なままでいてくれだとか、
妙なことばっか言って邪魔し続けたものだから、
結局何一つ身に付いてないし。

特に世継ぎをと願うなら、
男性としての義務以外にもある程度、
肉体的な快楽って言うのが伴わないと
続かないとも聞かされた。

たぶん私は世に言う快楽なんてものを
おまえに与えられた試しはないし。
特にアスランは王なんだから、
そう言ったことだって、
見たことも聞いたこともないって言うのは
まずいだろ?」

「この手のことは知らなくたって支障はないよ。
て言うか……いや、白状すれば
決してカガリ相手にそう言った経験をさせて
貰ったことがないってことはないんだけど……」
とたん、小さく妻から目を逸らし、後ろめたそうに
アスランが言った。

「そう、なのか?」
「……あぁ。正直俺は満足してる」

「でも、経験は人を大きくするぞ?」
悪気などまったくなさそうに、
可憐な瞳が彼に応える。

「それに、どんな方面であれ場数なんてものはだな。
足らないよりは数こなしてた方がいいはずなんだ!」
「それ、絶対にキラに言うなよ。
俺が間違いなく殴られるから」

たぶん自分が口にしている意味の
半分も理解してはいないのだろう、
半端な懐の深さと男気溢れる年下の愛妻に、
アスランはやれやれと言わんばかりに苦笑した。

「そう言うものかな」
「そう言うものだ。
それに、キラや俺はカガリには、
その手のことにあまり深く踏み込んで欲しくない」

「でも私は、陛下には幸せになって貰いたい。
英雄色を好むって言うんだろ?
男と生まれてきたからには、
居並ぶ美女を片っ端から夢中にさせて
めくるめく日々を送るのが
人生最大の幸せだって聞いたけど」

案ずるように眉根を寄せる妃を見つけ、
王の表情が苦虫を噛み潰したようなものから
一気に平坦な能面に変わった。
こうなったとき、彼の怒りはことのほか深い。

「……その話、一体誰から聞かされた?」
「ディアッカ。あと、フラガ隊長」

「ありがとう。とりあえず連中は
直ちに領地に戻した上で一ヶ月程度の登城禁止、
それで反省の色が見えればよし、
無理なら更迭もやむなしだな」

「馬鹿か、おまえは!
何怖い顔になんかなってるんだよ。
そんな洒落にもなりゃしないことを
真顔で言うのやめろよな!」

「洒落にならないのは連中の方だ。
大切な妃との仲にいらぬ亀裂を入れられて、
黙っていられるわけがあるか」

「アスラン!頼むから。
あの二人は我が国の要だぞ?
他国に取られたら大損だろうが!」

「……大損って。おまえと言う奴はまったくもう」
焦りとともに必死の抗議を彼へと向ける妃を抱いて、
アスランが堪らないと言った表情で
彼女の背中を抱き締めた。

「こんなときでも冷静な判断を欠かさない。
我が正妃はやはり生涯の宝だな」
それを受け、カガリが申し訳なさそうに彼に縋った。

「ごめんな、陛下。
そりゃ、首尾よく授かれるものならば、
陛下の御子を産みたいとは思っているよ?」

「カガリ……」
最愛の妃からの何より聞きたかった一言を受け止めて、
感激も顕にアスランが彼女を抱き締める。だが。

「直系の男子をもうけることは王家にとって、
王の寵愛を得るために選び出された女性たちにとって
大切な使命の一つだもんな……」
そんな王の幻想を、無常にも王妃は一瞬で叩き壊した。
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