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カガリは突然まったくの他者に、子を成す為に嫁ぐと言った。

しかも、目的は彼女の恋人
アスラン・ザラの痕跡をこの世に刻み、
これからの未来も失われた彼ともに生きる為であるのだと。

子の安全の為ならば、便宜上婚姻関係を結んだだけの
愛してもいない嫁した相手に身を委ね、
慰まれることも厭わない。

「その程度、その場になれば大したことじゃないさ。
しかしアレックス、
おまえってそんなとこまでアスラン似かよ。
奴も概してそうだった。
毒にも薬にもなりゃしない愚かな感傷に縛られて。
もっとも私も、
おまえらのことを言える立場じゃないけどな」
このくだらない感傷を断ち切る為に、
あそこまで深くおまえとの関係を望んだのだから、
とのまさかを平然と言い切られ、アレックスは気色ばんだ。

彼女の為に作られたアンドロイドである以上、
主の決定に反論するなどありえない。
本来はこのような意志を唱えること自体、
深刻な不具合であるだろう。

しかし……。
これがオリジナルの感情に裏打ちされた
システムが導く正当な答えであることが
明白である以上、
受け入れることは不可能だと
アレックスは早々に結論を出した。

彼のオリジナルであるならば、
即座に拒絶を示すだろう受け入れがたい主の未来。
こんなことをしても、アスラン・ザラは喜ばない。

アスランが求めたものは、
自身の永遠や彼を未来に活かすことではなくて、
彼女が幸せになることだ。

カガリは失われたアスランの時間を、彼女と子供に刻み込み、
この先もともに生きていくことが
自身の幸福であるとアレックスに言った。

その為には、合法的に彼女の子供を庇護できる、
国家規模での堅固な後ろ盾が必要であると。

アレックスが人ならぬ存在である以上、
カガリが今絶対必須と考えている、
子の親として世間一般に認められる後ろ盾、
伴侶となることは不可能だ。

精々がカガリと子に危害が加えられることがないように、
身を呈して守ることしかできはしない。
だが……。

「みすみす不幸になると知って、主を送り出す僕などいない」

これは断じてバグではない。
アレックスが彼を原型とする以上、
カガリの恋人アスラン・ザラの選ぶ帰結を完璧な形で遂行する。
アレックスは毅然と眼差しを上げた。

「まずは貴女を救い出す。
そのあとは、貴女の彼への認識の齟齬を
訂正させて頂きます」

声に出さずに呟いて、アレックスは
オリジナルと瓜二つの苛烈な翡翠を眇めると、
その場に低く身を沈めた。
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