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『秘書官他七名の救出完了。
犯人も確保しました。
今から前方客席に向かいます。

機内である以上、銃器、爆発物が用いられることは
まずないと思いますが、一応の警戒を願います』
『それと、国内のテロ対応に関してですが、
代表からご指摘のあった関連施設や催事場、
イベント等想定されるすべて対し、
可能な限りの監視及び警備人員の配備を完了したとの
報告がありました』

ご安心下さいとアレックスから告げられて、
カガリがほっと息をつく。

「そうか。ならよかった。それさえなければ安心だ」
『なりません、俺が着くまでお待ち下さい』

淡々と告げてくる彼女の部下に、
カガリの指先が静かに止まった。

カガリからの反応がないことを
不安に思ったに違いない。
ピアスに仕込んだ装置から注意の言葉を重ねられ、
肘掛を握り締めたカガリの唇が、
しばらくの沈黙の後ごく小さく声を発した。

「……なら来い」

『え?』
指輪を用いたモールスでなく、
直接の声を用いて伝えられた主からの言に驚いて、
アレックスの瞳が見張られる。

「待っている」

『はい。すぐに』
睨むように宙空を見つめるカガリに告げられて、
アレックスの口許がゆっくりと笑みの形に綻んだ。

無血での犯人確保を目指すなら、
先のように局地的に作用するガスを
用いることが有効と言える。

しかし現在カガリとともにいる
犯人グループのリーダーが、
その手の対策を自らに講じていない確証がない以上、
人質であるカガリの安全を最優先に望むなら、
先んじた手出しは極力しないのが穏当であると思われた。

懐と靴の踵、手首の袖部分に
仕込んだ薄刃のナイフが
即座に取り出せる状態にあることを
念のため再度確かめて、
アレックスは静かに瞑目する。

「代表は俺が守る。これはオリジナルの意図じゃない。
俺個人の……意志だ」

アレックスにとっては絶対の、
神にも等しいオリジナル。
自身の元となったオリジナルの意図でさえ、
アレックスにとっては理解しがたいものだったのに。

彼女、彼の主は想定の遥か上を行く人だった。
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