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「アスラン・ザラは爆死した。
そう言った形でカガリの中では決着がついているはずです。
俺の治療が成功するとは限らない。
再生を待たず死ぬかもしれない。
過去に前例がない以上、楽観することはできません。

と言うか、今俺に命があること自体、
ほとんど奇跡のようなものですし。
機械であれば修理のしようがないほど破損した、
或いは耐久年数が理由での廃棄されたで片付けられます。
ですが一部であれ、生身の俺が
アレックスに含まれていたと知れたなら。

カガリの衝撃は計り知れない。
二度も彼女に俺の死を味わわせるわけにはいきません」
アスランが静かにエリカを見上げる。

「……ごめんなさい」
 なんとも言えない苦悩を浮かべエリカが言った。
「いいえ。シモンズ所長が謝られるようなことは
何一つありません。
むしろ侘びを言うのは俺の方です。
ご迷惑をお掛けします。

あと以前も一度お願いしたと思うのですが、
可能であれば俺にエクステンデッド計画で使われた、
例の調整を掛けて下さい。
今ある記憶を上書きし、初対面の機械として違和感のないものを。
万が一にもカガリに俺が、
彼と同一であることを悟られるわけにはいきませんから」

「……そこまでする必要があるかしら」
 エリカが悩むように視線を落とした。

「必要です。
それにより俺は自分を作り物であると、
アスラン・ザラとはまったく別の、
彼女の為に用意されたプログラムである
との認識を持つことができる。

でなければ勘のいいカガリのことです。
早晩俺の存在に気づいてしまうと思います」

それ以降の問答は無用とばかり目を閉じるアスランに、
エリカは深い息を吐いた。

彼女を残して死ぬつもりはなかった。
けれど、それでもあのときは、間違いなく死を覚悟した。
だが今自分はここにいる。
どんな形であったとしても、何より大切な彼女の傍に。

その願いを叶えてくれた彼女の守護神ハウメアに感謝する。
本音を言えば、エリカのくれた提案が
実現可能とは思っていない。
どちらかと言えば無茶で乱暴な、
施術される自分にすら荒唐無稽な話であると捉えられた。

恐らく自分は二年を待たず死ぬだろう。
だが今のアスランにとって、
あるはずもなかったこの先の話など、
正直どうでも良いことなのだ。

まだ自分は、生きてカガリの傍にいる。
一分一秒でも長く、カガリを守って傍にいたい。
限られた時間、アスランにどれほどのことができるかはわからない。

けれど、この先のカガリに及ぼす禍の種を可能な限り摘み取って、
アスランが傍にいなくとも幸せな未来を生きるカガリの平穏を
少しでも長く見届けることができたなら。
そして、彼女に知られず去ることができるなら。

切なる願いに胸許に下げられた赤い石を握る。

「大丈夫だよ、カガリ。必ず君を守るから」
アスランは声に出さずに呟くと、再び意識に蓋をした。

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