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むっと唇を尖らせて、不満も顕に言ってくるカガリには、
アスランのドキドキなどまったく通じてはないようで。

「なぁ、開けといたっていいだろう?
マーナが見ているんじゃないんだし。
どうせ寝るだけなんだから、少しゆったり着させて欲しい」

可愛い彼女からそんな風に言われてしまえば、
包容力のある頼れる恋人を
できるものなら気取りたいアスランとすれば、
複雑な胸中はさておいて、駄目だと言えるわけもない。

……それに。
パーティーで見るドレスのときのそれとは違い、
繕わないカガリの素肌はアスランにとって、
眼福以外の何ものでもないのだし。
ならせめて、シャツの下に
あと一枚と提案すべきかと思ったけれど、
アスランはあっさりと目の前の幸せに節を曲げた。

「……カガリさえ、気にしないなら俺は別に」

するとカガリの機嫌が
目に見えて良好なものとなる。
ぱあっと明るい笑顔を見せて、
アスランの腕に
甘えるように身を摺り寄せたカガリが言った。

「さんきゅーな!だったら私はこのままで。
寒くもないし、わざわざ洗濯もの増やす必要もないだろう?」

生粋のお嬢様育ち、
そしてレジスタンス生活をしていた頃や
クサナギで指揮を執っていた頃ならばいざ知らず、
ここ数年はむしろ自力で身の回りのことをする
暇すらなかった多忙で身分ある彼女なのに。

こう言ったところは相変わらずで、
律儀で気配りのある、
見た目より庶民感覚を理解する
憎めない彼女に笑いが漏れる。

「カガリは絶対、将来いいお嫁さんになるな」
込み上げる愛しさを紛らす為に、拳を口に押し当てる。
くすくすと楽しげに笑ったアスランが言った。

「え?」
何のことだとカガリが首を傾げれば、
大したことじゃないんだと
アスランが重ねて笑顔を見せた。

「気にしないで。ただあまりに
カガリが変わらないでくれるのが
妙に嬉しかっただけだから」
「変わらないって、私のことか?」

「うん」
「それってどう言う意味なんだ」

「……上手く言えないけど、何もかも」
言いながら、上機嫌の彼に
まだ少し湿ったままの滑らかな髪に口づけられて、
カガリが唇を尖らせる。

「相変わらず、わけわかんない男だな」
「うん。ごめん」

膨れっ面の彼女はやはり可愛くて、
アスランの笑いは収まる風を見せなかった。

「もう!仕方ないな。
どんどん時間が経っちゃうじゃないか。
さっさと風呂に入ってこいよ。
散々煩わせた私が言うのもなんだけど、
おまえ明日は仕事なんだろう?
早くしないと寝る時間なくなるぞ?」
「あぁ、そうだな」

カガリに背中を押し出され、
アスランが振り返りざま彼女にニコリと微笑んだ。

「いってきます」
「うん。急がなくていいから、
ちゃんと浸かって温まってこいよ」

促されるままに浴室へ向かい、
脱いだ衣服を洗濯機へと押し込んで。
きちんと畳まれた彼女の衣服も一緒に洗ってみたものか、
しばし迷う。

「着替えは明日、朝一で屋敷の方へ取りに行くことにして。
ここにある服はこのままの方がいいのかな。それとも……」
駄目だ。今日は頭が動かないと、
無意識のため息がアスランの口から零れ落ちる。

……別に何か、特別なことを期待したわけではないけれど。
曲りなりにも恋人同士を認ずる男女が二人きり、
こう言ったシチュエーションであるならば、
多少は頭を過るだろうありがちな羞恥や逡巡や、
もしくはアスランへの女性としての警戒心なんてものは、
どうやら彼女の脳裏には、一切よぎることはなかったらしい。

少々の失望と隠しきれない傷心を抱え、
それでもどうにか持ち前のポーカーフェイスを作り上げ、
アスランはランドリーを後にする。

「それでも部屋に入るまでは、
少しは意識してくれてるように見えたのに」

してみるとあれらはすべて、
アスランの期待が見せた幻想だったのだろうか。
だとしたら相当情けない上に、
今後の自分たちの関係……と言うか今後自体が不安すぎる。
浮ついた思考を冷ますべく、低めのシャワーを浴びながら、
アスランは深い息を吐き出した。

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