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「その後は、ルージュと遠乗りに行った」
「ルージュは元気にしていたか?」

にこにこと告げてくる自慢の妻に、アスランが甘やかすように先を促す。

「うん!でもおまえのジャスティスは
相当にお冠だったみたいだぞ?
可哀想に。
陛下はここのところジャスティスのことを、
全然構ってないだろう。

あいつは私のルージュと一緒で、
主以外の人間に触れられることを嫌うから、
おまえが来ないと全然厩を出てこない。
イージスが誘いに行くと不承不承出てくるらしいけど、
それじゃあ全然気晴らしにも運動にだってならないだろう?」

カガリが可憐な眉宇を顰める。

「何だったら私が少しジャスティスを連れ出してやろうか。
アスランはまだ当分忙しいのが続くんだろう?」

私なら一応ジャスティスは乗せてくれるし、
ルージュと一緒に連れ出せば
あいつも気が晴れるんじゃないかと思うんだとカガリが言えば、
アスランがありがとう。
それは助かるとカガリに向かって手を延べた。

「だがそれは、またの機会に取っておいて欲しい。
実は今日、やっと休みをもぎ取って来たところなんだ。
明日にでもちょっとした食事を持って、
ジャスティスと遠乗りに行こうと思ってた。
カガリ、明日の予定は?」

「ない!」

「だったら二人で久しぶりに北の国境辺りまで行かないか?
弁当を持って、ゆっくりできるように敷物とか一式鞍に乗せて。
イージスも連れて行ったらルージュがきっと喜ぶし、
荷物もわけられて一石二鳥だと思うけど」

イージスとは王妃の可愛がっている愛馬ルージュと
王の愛馬の息子の名前だ。
王の愛馬で国一番の駿馬として有名な、
黒駒のジャスティスそっくりな外見と
国中に轟く優秀な両親の名に恥じない稀有の資質を持つことで知られている。

気難しい父と、情は深いが気の強い母から生まれた
サラブレッドである割に
子馬の頃からの素直で知られ、
母である白馬のルージュの特徴を受け継いだものか
額に白の一つ星形の斑点を持つことから、
王妃からは大層愛されている。

「ちょっと待て。イージスと皆で遠乗りは嬉しいけれど」
上機嫌で微笑みながら妻の裸身に手を伸ばすアスラン王を、
王妃がすげなく振り払った。

「どうした?」

「いきなり北って何なんだ。おまえは明日休みなんだろう?
だとしたら、一日ゆっくりできるようにって、
いつもだったら問答無用で静かな南の離宮だろ。
あそこだったらベタベタするにも気兼ねがいらないとか何とか、
怪しげなことばっか主張して
朝早くから遠乗りもそこそこに
寝室に籠ろうとするのがお約束じゃないか」

「……怪しげって、カガリ。
人聞きの悪いことを言ってくれるなよ」
納得いかなそうな渋面を浮かべ、図星を刺されたアスランが応える。

「久しぶりに勝ち得た貴重な休み、
滅多に会えない可愛い妃を存分に慈しみ、
その結果部屋から数日出てこない程度、
国を案ずる臣下から、
謝意を捧げられ深く安堵されることはあれ、
とやかく言われる筋合いはない」

そうでなくともこのところ、
世継ぎはまだかと周囲がかしましくて参ってるんだと
苦り切った様子のアスランが言えば、
それについてはおまえが悪い。
さっさと望ましいご婦人におまえの子供を授けて貰え
とカガリがすげなく言い捨てた。

「俺としては、カガリに是非とも
子を産んで欲しいと再三頼んでいるんだが」
アスランがげっそりと差し伸べた手を引っ込める。

「確かにな。だが、
だからと言っていくらおまえの願いでも、
頼まれたから『よし、任せろ』と
軽々に叶えてやれるわけもない。
特にこの手のことは私などでは役不足だ」

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