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こちらは今拍手内で連載中のお話をまとめたものです。

ありがたくもこのお話を好きだとおっしゃって下さる皆様が
多いので、現時点のお話に追いつくまで続けて
公開させて頂こうと思います。

なおこちらは限定公開ですので、
現在の拍手に追いついた時点で下げさせて頂く予定です。
お楽しみ頂けましたら幸いです。



「騒がせてすまない。王妃はいるか」

「陛下!今はご入室はなりません。
王妃さまはご入浴中でいらっしゃいます」

「知ってる。だが急を要するんだ。
何、おまえたちが心配するようなことはない。
王妃はおまえたちより寛大だ。
俺が入浴中入ったところで
文句は言ってもそこまでショックは受けないよ」

ゆったりと優雅な笑みを浮かべ、
れっきとした成人男性であるにも関わらず、
王宮内の王妃の浴室に現れた現国王アスラン・ザラに、
彼にとっての唯一の妃、
正妃カガリの身の回りの世話をする女官たちが
色めき立って静止を掛ける。

「陛下!王妃さまは淑女でいらっしゃいます。
いくら王でもご入浴中の御目文字はマナー違反でございます!」

「そうだな。だが俺たちは夫婦だ。
お互い裸なんか見慣れてる」
「陛下!!」

広い浴槽一杯に色彩鮮やかな花々を浮かべ、
高価な花の香りのする香油をふんだんに垂らした湯の中で、
目を閉じてのんびりと揺蕩っていた
この国の美貌の王妃は、不満も顕に目を開ける。

「……あの馬鹿、一体何をやっている」

扉の向こう、今いる浴室棟から少し離れた居室の方へ
冴えた美しい眼差しを向けると、
カガリは忌々しげに舌打ちを漏らした。

「アスランが来てるのか?」
「はい。何ですか急なご用だそうで、
姫さまへのご面会をご希望です」

浴槽の脇に膝をつき、濡れるのも厭わずに
カガリの身体を甲斐甲斐しく清めてくれていた
優しい乳母に、そうかと柔らかな笑顔を見せたカガリは
いきなり浴槽の中に立ち上がった。

「騒がしいぞ、陛下。
おまえはこの城の主だろう。
何を一々入室の許可など取っている。
どれほどの無法をしようとも、この城の中におまえのすることに
反論できるものなどいるものか。
用があるなら黙って入ればいいだろう」

全裸で毅然と腕を組み、
今まさに扉を開けて入ってきたばかりの
彼女の夫にしてこの国の主を睥睨するカガリに
アスランは参ったとばかり苦笑した。

「カガリ、全部見えてる」
「だろうな」

目のやり場に困った風に立ち止まるアスランに、
憮然となったカガリが応えた。

「綺麗な花だな」
「あぁ、綺麗だろ?
侍女たちが庭園の花を摘んできてくれた。
あとでおまえにもやって貰うか」

「いい、もしやるんだったらカガリと入る。
その方が花も無駄にならないし、
何よりも俺にとっては特別楽しい目の保養だ」

「ふうん?」

どの程度、自身の夫の蕩けるような眼差しの
意味をわかっているものか、
凛々しい出で立ちとは裏腹に無垢な瞳を丸くする、
愛してやまない年下の妃に、
アスランは堪らないと言った様子で微笑した。

纏った衣服が濡れるのも構わずに浴槽の中に足を入れ、
縁へと腰を下ろしたアスランが、
立ったまま彼を見下ろすカガリを見上げる。

「朝から湯浴みとは珍しいな。
さては兵たちに混ざって打ち合いでもしたか」

「うん。今日はシンたちが練兵場に出ていてな。
久しぶりに手合わせして貰ったんだ。
あいつら結構腕上がってたぞ?
特にルナの動き。恐ろしくキレがよくなっていた」

嬉しくてならないようにカガリが言った。
本来ならば王妃の護衛を司る親衛隊の一員とは言え
一兵卒に過ぎないシンやルナマリアと、
国王の妃でありながらアスランと並ぶ剣の使い手として、
独身時代は『暁の姫将軍』の二つ名を欲しいままにした
カガリとが打ち合うなどありえない。

だが、立場より、その人物の腕や気立てに
重きを置くカガリだから、
その辺りを気にする様子は見られない。
夫であるアスランも
最愛の正妃の身に危険が及ぶと言う
一点についてだけは容赦なくあるものの、
他の事柄への感覚は似たようなものだったから
カガリの楽しげな報告を寛いだ様子で聞いていた。
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